この記事ではLLMに特化して解説する。LLM全般の仕組みやローカル実行は LLMとは?仕組みからローカル実行まで徹底解説【2026年完全ガイド】 を参照してほしい。

GLM-5.2は、中国のAI企業Z.ai(旧Zhipu AI/智谱AI)が2026年6月13日に重みを公開した、744B MoEのオープンウェイト大規模言語モデルだ。MITライセンスで配布され、1Mトークンのコンテキストと長期タスク(long-horizon)向けのコーディング性能を掲げる。まず「このモデルが何を持っているか」を1枚で示す。

GLM-5.2は744B MoEをMITで公開。1Mコンテキスト、IndexShareでFLOPs2.9倍削減、コーディング系ベンチ(Terminal-Bench 2.1が63.5→81.0など)の公称値、Artificial Analysis Index 51でオープン首位
GLM-5.2の要点を一次情報だけで整理したハイライト。数値はHugging Faceモデルカードとzai-org/GLM-5のREADME、Artificial Analysisの公開値による(作図:AI Heartland)
この記事でわかること
Z.ai(智谱AI)がGLM-5.2をいつ・どの形式で公開したか、一次ソースの所在
744B MoE・1Mコンテキスト・IndexShareというアーキテクチャ上の特徴
公称ベンチマークと、Claude・GPT・DeepSeek・Qwenとの公称比較で読める位置
MITライセンスが許す範囲と、商用利用で確認すべき点
744Bモデルをローカルで動かすときに直面するメモリとコストの現実

Hugging Faceの zai-org/GLM-5.2 とModelScopeで配布され、ライセンスはMIT。 本記事は、Hugging Faceのモデルカードと config.json、GitHubの zai-org/GLM-5 README、公式ブログ、arXivの技術レポートという一次ソースだけを根拠に、GLM-5.2の素性を整理する。 噂段階の数値や、出典の取れない性能主張は扱わない。 数値はすべて「公称(モデルカード・README掲載)」または「公開(第三者評価)」と明記する。

We're introducing GLM-5.2, our latest flagship model for long-horizon tasks. It marks a substantial leap in long-horizon task capability over its predecessor GLM-5.1 and, for the first time, delivers that capability on a solid 1M-token context.
(GLM-5.2を発表する。長期タスク向けの最新フラッグシップであり、前身のGLM-5.1から長期タスク能力を大きく引き上げ、それを初めて安定した1Mトークンのコンテキストで実現した。)
Hugging Face モデルカード zai-org/GLM-5.2
GLM-5.2の主要スペックを4つの数値で示すブランド図:744B総パラメータ・40Bアクティブ・1Mコンテキスト・MITライセンス
GLM-5.2の主要スペック:744B総パラメータ・40Bアクティブ・1Mコンテキスト・MITライセンス。図はローカル生成(HTML/CSS)。

GLM-5.2 とは:Z.ai(智谱AI)の最新オープンモデルで何ができるか

GLM-5.2を出したのはZ.aiという会社だ。 旧称はZhipu AI(智谱AI)で、清華大学発のスタートアップとして知られる。 Hugging Face上の組織名は zai-org であり、GLM-4.5・GLM-5・GLM-5.1といった系譜のモデルを同じ組織アカウントから公開してきた。

まず「このモデルで何ができるのか」に一言で答えると、長いコードベースを丸ごと読ませ、多段のコーディングやツール実行を長時間続けさせる用途に向いたオープンウェイトモデルだ。 モデルカードはGLM-5.2を「our latest flagship model for long-horizon tasks(長期タスク向けの最新フラッグシップ)」と位置づける。 ここで言う long-horizon task とは、数十ステップにわたる自律的なコーディングやエージェント実行のように、長い文脈と多段の判断を要する作業を指す。

公開日は2026年6月13日。 配布チャネルは複数あり、重みそのものを手元に置ける点が要点になる。

・Hugging Faceでの重み配布(zai-org/GLM-5.2、Safetensors形式・BF16)
・ModelScopeでの重み配布(ZhipuAI/GLM-5.2
・FP8量子化版の公式配布(zai-org/GLM-5.2-FP8
・Z.ai APIプラットフォーム(https://docs.z.ai/guides/llm/glm-5.2
・チャットUI https://chat.z.ai

GLM-5.2が掲げる4つの新機能を、README・モデルカードの記述に沿って並べる。

Solid 1M Context:長期作業を安定して支える1Mトークンのコンテキスト
Advanced Coding with Flexible Effort:思考量(effort level)を複数段階で切り替え、性能とレイテンシのバランスを取れる強化されたコーディング能力
Improved Architecture:IndexShareの提案により、1Mコンテキスト時の1トークンあたりFLOPsを2.9倍削減
Pure Open:MITライセンスによる「地域制限のない」公開

最後の「Pure Open」は、モデルカードが原文で An MIT open-source license — no regional limits, technical access without borders と書いている点だ。 中国発のモデルでは利用地域や用途に制約がつく例もあるなか、GLM-5.2は重み配布とライセンスのうえで地域制限を設けないことを明示している。 ライセンスの解釈は利用者の責任になるため、採用前に必ず最新のLICENSE本文を自分で読むことを勧める。

GLM 系譜の中の位置付け:GLM-4.5 から GLM-5.2 へ何を解決してきたか

GLM-5.2は突然現れたモデルではなく、GLM系統の連続した更新の一段だ。 このセクションでは「GLM-5系が何を解決しようとしてきたか」を系譜で押さえる。 Hugging Faceの公開履歴とREADMEの記述から、近い世代の関係を時系列で示す。

graph LR A["GLM-4.5
355B / 32B active
オープン世代の確立"] --> B["GLM-5
744B / 40B active
DSA導入・arXiv:2602.15763"] B --> C["GLM-5.1
agentic engineering
長期タスク強化"] C --> D["GLM-5.2
2026-06-13公開
1Mコンテキスト + IndexShare"]

READMEによれば、GLM-4.5からGLM-5への移行で総パラメータは355B(32Bアクティブ)から744B(40Bアクティブ)へスケールし、事前学習データも23Tトークンから28.5Tトークンへ拡大した。 このときにDeepSeek Sparse Attention(DSA)を統合し、長文脈能力を保ったまま推論コストを抑える設計へ切り替えている。 つまりGLM-5世代の狙いは、最初から「複雑なシステム開発と長期エージェントタスク」だった。 GLM-5.2の技術的な土台は、arXivに公開された技術レポート「GLM-5: from Vibe Coding to Agentic Engineering」(arXiv:2602.15763)にある。

GLM-5.1との差分を、公称ベンチマークから読み取れる範囲で整理する。 Artificial Analysisによれば、GLM-5.2はGLM-5.1と同じサイズ(744B総・40Bアクティブ)でありながら、Intelligence Index v4.1で11ポイント上回るとされる。 つまり今回の更新は、パラメータ規模の拡大ではなく、アーキテクチャと学習の改良による性能向上という性格を持つ。

項目GLM-5.1GLM-5.2
公開GLM-5.2の前世代2026年6月13日
規模(公称)744B総 / 40Bアクティブ MoE744B総 / 40Bアクティブ MoE
コンテキスト前世代1Mトークン(公式に「solid」と表現)
SWE-bench Pro(公称)58.462.1
AIME 2026(公称)95.399.2
Terminal Bench 2.1(公称)62.081.0
Artificial Analysis Index約40(公開)51(公開・オープン首位)

数値の伸びは長期タスク系(Terminal Bench、SWE-bench Pro)で大きい。 GLM-5.2が「long-horizon tasks向けフラッグシップ」を名乗る根拠は、この差分に表れている。 言い換えれば、GLM-5.2が解決するのは「エージェントが途中で息切れする」という従来モデルの弱点で、長く走らせるほど成果が積み上がる設計を狙っている。

アーキテクチャと技術特性:744B MoE と IndexShare は何を代替するのか

GLM-5.2の中身は、Hugging Faceに同梱された config.json で確認できる。 モデルカード本文はパラメータ総数を明記していないが、config.json のMoE構成は公式の一次情報として読める。 主要な設定値を抜き出す。

設定(config.json)意味
model_typeglm_moe_dsaMoE + DSA(疎なアテンション)構成
num_hidden_layers7878層
first_k_dense_replace3最初の3層はdense、以降はMoE
n_routed_experts256ルーテッドエキスパート256個
num_experts_per_tok81トークンあたり8エキスパートを起動
n_shared_experts1共有エキスパート1個
hidden_size6144隠れ層次元
max_position_embeddings10485761Mトークンのコンテキスト
kv_lora_rank / q_lora_rank512 / 2048MLA系の低ランク圧縮アテンション
num_nextn_predict_layers1MTP(投機的デコード用)層

公称の総パラメータは744B、1トークンの推論で実際に動くのは約40Bだ(256のルーテッドエキスパートのうち8と、共有1を起動する)。 この比率がMoEの要点になる。 保持すべき重みは744B分だが、1トークンの計算コストは40B級にとどまる。 表現力の上限を大きく取りつつ、推論時の演算量を抑える設計だ。 「何を代替するのか」で言えば、密(dense)な巨大モデルを1台に載せて回すコストを、疎なMoEと圧縮アテンションで置き換える発想になる。

アーキテクチャ上の新しさはIndexShareにある。 モデルカードによれば、IndexShareは「同じindexerを4つの疎アテンション層ごとに再利用する(reuses the same indexer across every four sparse attention layers)」仕組みで、1Mコンテキスト時の1トークンあたりFLOPsを2.9倍削減する。 config.jsonindex_topk_freq: 4index_topk: 2048indexer_types に並ぶ fullshared のパターンが、この4層周期の共有構造に対応している。 詳細はIndexShareの論文(arXiv:2603.12201)が扱う。

もう一つ、MTP層(Multi-Token Prediction)の改良で投機的デコードの受理長を最大20%伸ばしたとされる。 投機的デコードは、小さなドラフトで先読みした複数トークンを本体が一括検証する高速化手法で、受理長が伸びるほど生成が速くなる。

graph TD IN["入力トークン
最大1Mコンテキスト"] --> DENSE["先頭3層: dense"] DENSE --> SPARSE["残り75層: MoE層
256エキスパート中8起動 + 共有1"] SPARSE --> ATT["DSA 疎アテンション
IndexShare: indexerを4層ごとに共有"] ATT --> MTP["MTP層で投機的デコード
受理長 最大+20%"] MTP --> OUT["出力
最大131,072トークン"]
DSAは「DeepSeek Sparse Attention」系の疎アテンションを指す表記で、`config.json` の `model_type: glm_moe_dsa` と一致する。GLM-5.2はMLA系の低ランク圧縮アテンションと疎アテンションを組み合わせ、長いコンテキストでもKVキャッシュと計算量を抑える設計を取っている。GLM-5世代でDSAを導入した目的は、READMEにある通り「largely reducing deployment cost while preserving long-context capacity(長文脈能力を保ったまま展開コストを大きく下げる)」ことだ。

公称ベンチマーク:モデルカードとREADME掲載値で何ができるかを測る

ここからの数値は、すべてHugging Faceモデルカードと zai-org/GLM-5 READMEに掲載された公称値だ。 開発元による測定であり、ハーネスや評価条件は項目ごとに異なる。 読者の用途での再現確認を前提に読んでほしい。 まず開発元がREADMEに掲載しているベンチマーク比較画像を示す。

GLM-5.2の公称ベンチマーク比較。コーディング・推論・エージェント各系のスコアを他モデルと並べた開発元の公式グラフ
GLM-5.2の公式ベンチマーク比較(出典:zai-org/GLM-5 README の resources/bench_52.png)

READMEの本文は、標準的なコーディングベンチでGLM-5.2が「the strongest open-source model(最強のオープンソースモデル)」であり、Terminal-Bench 2.1で81.0対62.0、SWE-bench Proで62.1対58.4とGLM-5.1を大きく上回ると述べる。 さらに「Terminal-Bench 2.1(81.0)はClaude Opus 4.8(85.0)の数ポイント差まで迫り、Gemini 3.1 Proを上回る」とも書いている。 モデルカードに掲載された主要ベンチマークを表で押さえる。

ベンチマーク分類GLM-5.2(公称)GLM-5.1(公称)
HLE推論40.531
HLE (w/ Tools)推論54.752.3
AIME 2026数学99.295.3
HMMT Feb. 2026数学92.582.6
GPQA-Diamond知識91.286.2
SWE-bench Proコーディング62.158.4
NL2Repoコーディング48.942.7
Terminal Bench 2.1 (Terminus-2)コーディング81.062.0
FrontierSWE (Dominance)コーディング74.430.5
SWE-Marathonコーディング13.01.0
MCP-Atlas (Public Set)エージェント76.871.8
Tool-Decathlonエージェント48.240.7

伸び幅が際立つのはFrontierSWE(30.5→74.4)とSWE-Marathon(1.0→13.0)、Terminal Bench(62.0→81.0)だ。 いずれも長く続くコーディング作業を測る項目で、GLM-5.2が長期タスク向けを名乗る理由とつながる。 一方、HLE(人類最後の試験)は40.5で、絶対値としてはまだ高くない領域だ。 得意分野と苦手分野が数値にはっきり出ている点は、採用判断のときに見落とさないほうがいい。 「何ができるか」を数値で言えば、GLM-5.2は数学(AIME 99.2)とエージェント的コーディングで強く、純粋な難問知識(HLE)ではまだ余地がある、という読み方になる。

競合モデルとの対比:DeepSeek・Qwen・Claude・GPT・Gemini のどれを代替できるか

モデルカードは同じ表の中で、競合モデルの公称・引用値も並べている。 ここでは代表的な項目だけを取り出して対比する。 他社列の数値はモデルカードに記載された値であり、* 付きは出典元での引用値を意味する(条件が異なる可能性がある)。

ベンチ(公称/引用)GLM-5.2DeepSeek-V4-ProQwen3.7-MaxClaude Opus 4.8GPT-5.5Gemini 3.1 Pro
SWE-bench Pro62.155.460.669.258.654.2
Terminal Bench 2.181.06475858474
FrontierSWE74.429.075.172.639.6
GPQA-Diamond91.290.19093.693.694.3
AIME 202699.294.69795.798.398.2
MCP-Atlas76.873.676.477.875.369.2

表から読めることを、煽らずに整理する。 コーディング系(SWE-bench Pro、FrontierSWE)でGLM-5.2はGPT-5.5・DeepSeek・Qwenを上回る項目があり、Claude Opus 4.8とは互角からやや下という位置にある。 数学のAIME 2026では99.2でClaude Opus 4.8を上回る。 一方、知識系のGPQA-Diamondでは91.2で、クローズドの上位モデル(93〜94台)にわずかに届かない。 「どのモデルを代替できるか」で言えば、コーディング・エージェント用途でクローズドモデルの費用を抑えたいときの自己ホスト候補として、DeepSeek/Qwen系オープンモデルの上位互換に立つ、という位置づけが読み取れる。

独立評価では、Artificial AnalysisがIntelligence Index v4.1でGLM-5.2(max)に51を付け、オープンウェイトモデルの首位とした。 MiniMax-M3(44)やDeepSeek V4 Pro(max、44)を上回る、というのがArtificial Analysisの公開した位置づけだ。

GLM-5.2 is the new leading open weights model on the Artificial Analysis Intelligence Index.
(GLM-5.2はArtificial Analysis Intelligence Indexで首位のオープンウェイトモデルとなった。)
Artificial Analysis

VentureBeatは、GLM-5.2が複数の長期コーディングベンチでGPT-5.5を「6分の1のコスト」で上回ると報じた。 コスト効率の主張は配信元の記事に依存するため、自分の課金体系に当てはまるかは個別に検証する必要がある。

API と effort 設定:まず動かして何ができるか確かめる

自己ホストの前に挙動を確かめたいなら、Z.ai APIかチャットUIが最短だ。 GLM-5.2はOpenAI互換のチャット補完形式で呼べる(エンドポイントとキーはZ.ai APIプラットフォームで取得する)。 GLM-5系で押さえておきたいのは、思考量を切り替える reasoning_effort パラメータだ。 READMEによれば maxhigh の2段階を受け付け、既定は max(未設定や high 以外を指定するとMaxで動く)。ベンチマークやリーダーボードの再現は既定のMaxで行い、応答を速くしたいときだけ reasoning_effort="high" を明示する。思考自体は enable_thinking=false で完全に切れる。

コードはAPI呼び出しの要点を1つだけ示す。羅列は避け、実際の運用ではZ.ai公式ドキュメント(docs.z.ai)の最新パラメータを確認してほしい。
# OpenAI互換クライアントでGLM-5.2を呼ぶ最小例(キー・URLはZ.ai APIプラットフォームで取得)
from openai import OpenAI

client = OpenAI(api_key="<ZAI_API_KEY>", base_url="https://api.z.ai/api/paas/v4")
resp = client.chat.completions.create(
    model="glm-5.2",
    messages=[{"role": "user", "content": "このリポジトリの設計方針を要約して"}],
    extra_body={"reasoning_effort": "high"},  # 既定はmax。速さ優先ならhigh、思考オフはenable_thinking=false
)
print(resp.choices[0].message.content)

このワンステップで「1Mコンテキストに長文を投げて要約させる」「エージェントのツール呼び出しを回す」といった検証ができる。 自己ホストへの投資判断は、この段階で自分のタスクに対する手応えを掴んでから行うのが堅実だ。

ライセンスと商用利用:MIT が許す範囲で何ができるか

GLM-5.2のライセンスはMITだ。 config.json の隣に置かれたモデルカードのメタデータにも license: mit と記載されている。 MITは、許諾表示を残せば、複製・改変・再配布・商用利用・サブライセンスを広く認める。 重みを社内サーバに置いて自己ホストする、独自データでファインチューニングする、製品に組み込んで販売する、といった使い方が原則として可能だ。

GLM-5.2のMIT採用で実務上効くのは次の点だ。

・自己ホストできるため、APIに機微データを送らずに済む
・ファインチューニング後の派生モデルも自分の裁量で配布・販売できる
・地域制限がないとモデルカードが明記しており、利用地域を理由に止まりにくい
・許諾表示(著作権表示とライセンス文の同梱)の義務は残るため、再配布時の同梱を忘れない

ただし、MITはモデルの出力に対する責任までは引き受けない。 生成物の権利や安全性、各国の規制適合は利用者側の判断になる。 商用採用の前には、LICENSEファイルの原文と、Z.ai側の利用規約(API利用時)を別々に確認しておきたい。 MITという選択は、同じオープンウェイトでも独自ライセンス(例:一定規模以上の商用に別許諾を求める形態)を採る競合と比べ、採用時の法務コストを下げる点で「何を代替できるか」に直結する。

ローカル運用の現実:744B をどう動かすか

オープンウェイトであることと、手元のマシンで気軽に動くことは別の話だ。 GLM-5.2は744Bの重みを持つため、ローカル運用のハードルは高い。 READMEが挙げる対応フレームワークは次の通りだ。

・SGLang(v0.5.13.post1以降、公式cookbookあり)
・vLLM(v0.23.0以降、公式recipesあり)
・Transformers(v0.5.12以降、glm_moe_dsa モデルドキュメントあり)
・KTransformers(v0.5.12以降、CPUオフロード併用のチュートリアルあり)
・Unsloth(v0.1.47-beta以降、量子化・ファインチューニング向けガイドあり)
・Ascend NPU向けにはvLLM-Ascend・xLLM・SGLang

メモリ要件を概算する(いずれも推定で、量子化方式や実装で増減する)。 BF16のままなら744B × 2バイトで、重みだけでおよそ1.4〜1.5TBに達する。 公式のFP8版(zai-org/GLM-5.2-FP8)を使えばおおむね半分、4ビット量子化でも約370〜400GB前後が目安になり、いずれにせよ単一の消費者向けGPUには載らない。 現実的な選択肢は、複数の高VRAM GPUを束ねる構成か、KTransformersのようにCPUオフロードを併用する構成、あるいは大容量ユニファイドメモリを積んだ環境になる。

代表的な推論フレームワークを早見表にまとめる(対応最小版はREADME記載値)。

フレームワーク 対応最小版 主な用途 補足
SGLang v0.5.13.post1〜 高スループット推論 公式cookbookあり
vLLM v0.23.0〜 OpenAI互換サーバ 公式recipesあり
Transformers v0.5.12〜 検証・研究 glm_moe_dsa モデルドキュメント
KTransformers v0.5.12〜 CPUオフロード併用 大容量RAMで744Bを分散
Unsloth v0.1.47-beta〜 量子化・ファインチューニング 4bit量子化ガイドあり

FP8版(zai-org/GLM-5.2-FP8)を使う場合の最短手順は、重みを取得してから推論サーバを起動する2ステップだ。

# 1) FP8重みを取得(BF16版よりおよそ半分のディスク・メモリで済む)
huggingface-cli download zai-org/GLM-5.2-FP8 --local-dir ./GLM-5.2-FP8

# 2) vLLMでOpenAI互換サーバとして起動(GPU枚数は環境に合わせる。詳細は公式recipesを参照)
vllm serve ./GLM-5.2-FP8 --served-model-name glm-5.2 --tensor-parallel-size 8

SGLangを使う場合は、同じ重みを次のように起動する(対応版はv0.5.13.post1以降。フラグは公式cookbookで確認する)。

python -m sglang.launch_server --model-path ./GLM-5.2-FP8 --tp 8 --host 0.0.0.0 --port 30000
graph LR HF["Hugging Face / ModelScope
zai-org/GLM-5.2
BF16 または FP8"] --> DL["ダウンロード
BF16は約1.4〜1.5TB / FP8は約半分"] DL --> Q["量子化
4bit等で約370〜400GB(推定)"] Q --> ENG["推論エンジン
SGLang / vLLM / KTransformers / Unsloth"] ENG --> RUN["マルチGPU or 大容量メモリで実行"]
個人開発者が1台のGPUで気軽に動かす規模ではない。手元で試すだけなら、まずZ.ai APIやチャットUI、または各種クラウドの推論サービスで挙動を確かめ、自己ホストの投資判断はそのうえで行うのが堅実だ。FP8版でも数百GB級のメモリが要る点は変わらない。

ローカルLLMを動かす土台づくりについては ローカルLLMツールガイド【2026年版】 で、Ollamaを使った具体的な手順は Ollama 0.24でOpenAI Codex CLIがローカルLLMで動く で扱っている。

ai-archive-jp 読者にとっての価値

OSS開発や個人開発の視点で、GLM-5.2が持つ意味を3つに絞る。

第一に、MITで配布される744Bクラスのモデルが選択肢に入ったことだ。 重みを自己ホストできるため、APIに依存しない開発フローを組める。 データを外に出せない案件や、レート制限・課金を気にせず長時間回したい実験で効いてくる。

第二に、1Mコンテキストと長期タスク特化という設計が、エージェント用途に向く点だ。 GLM-5.2の公称値が伸びているのは、まさに多段のコーディングやツール実行を続けるベンチだった。 長いコードベースを丸ごと読ませる、複数ファイルにまたがる変更を一括で扱う、といった作業との相性が見込める。

第三に、Z.aiが同じ組織から関連OSSを継続して出している点だ。 たとえばGLMファミリーのスキル集をまとめた GLM-Skills のように、モデル単体だけでなく周辺のツール群も公開されている。 GLM-5.2を採用するなら、こうした周辺リポジトリも合わせて見ておくと、組み込みの手数が減る。

macOS上でローカルモデルを動かすハーネスに関心があるなら、Osaurus のような軽量ランタイムと組み合わせる選択肢も検討の余地がある(744Bをそのまま載せる用途ではなく、量子化済みの軽量モデルや小型版を扱う場面での話だ)。

制限事項・注意点

最後に、GLM-5.2を評価するときに踏まえておきたい点を、事実ベースで挙げる。

公開時点で開発元の公式ベンチマークの一部が出そろっていなかった、という指摘がある。 Artificial Analysisなどの第三者評価が先行し、開発元の詳細値が後追いになった項目があった。 コミュニティの反応は概ね好意的(あるトラッカーでは約91%が肯定)だったが、否定的な声は2点に集まった。 一つは、「オープン」を掲げつつ実利用の入口が有料のCoding Plan経由に見える点への違和感。 もう一つは、大きな仕様更新に対してローンチ時のベンチ提示が手薄に見えた点だ。 これらは観察された評価であり、現在の配布状況はモデルカードと公式ブログで都度確認してほしい。

中国発のモデルである点については、事実だけを記しておく。 GLM-5.2のモデルカードは学習データや内容モデレーションの詳細を網羅的には公開していない。 中国国内のAIサービスには規制由来の出力制約が存在するが、自己ホストするオープンウェイトでその制約がどう作用するかは、モデルや運用設定によって変わる。 特定の話題での挙動が気になる用途なら、自分の環境で実際に試して確認するのが確実だ。 本記事は価値判断を下さず、判断材料の所在だけを示す。

数値はすべて公称・公開値である点も繰り返しておく。 ベンチマークは測定条件で動く。 採用を検討するなら、自分のタスクで小さく走らせて、公称値が再現するかを見るのが一番早い。

まとめ

GLM-5.2は、Z.ai(智谱AI)が2026年6月13日にMITで公開した744B MoEのオープンウェイトモデルだ。 1Mコンテキスト、IndexShareによる疎アテンションの効率化、長期タスク向けの公称ベンチ改善が要点になる。 Artificial Analysisの独立評価ではオープン首位(Index 51)とされ、コーディング系では一部のクローズドモデルに迫る公称値を示した。 一方で744Bの重みはローカル運用のハードルが高く、商用採用にはライセンス本文の確認が要る。 重みが手元に置ける以上、まずはAPIやチャットUIで挙動を確かめ、自分のタスクで公称値が再現するかを小さく検証することから始めるのが現実的だ。

参照ソース

zai-org/GLM-5.2 — Hugging Face モデルカード(公開日・機能・ベンチマーク・ライセンス・config.json)
zai-org/GLM-5 — GitHub README(GLM-5.2/5.1/5シリーズ概要・ダウンロード表・対応フレームワーク・reasoning_effort・bench_52.png)
Z.ai 公式ブログ GLM-5.2(公式発表)
GLM-5: from Vibe Coding to Agentic Engineering(arXiv:2602.15763)(技術レポート)
IndexShare(arXiv:2603.12201)(疎アテンションのindexer共有)
GLM-5.2 — Artificial Analysis(独立評価・Intelligence Index v4.1)